不可解なモノ その6(復活) 電力事業に思う事

電力事業

2024年3月期第二四半期決算に思う事

11月初め電力大手10社の第二四半期実績が発表になりました。各社苦しんだ2022年度(2023年3月期)から一転全社黒字となったようです。四季報の記事が参考になりましたのでURL載せて置きます。

四季報 電力大手10社の最新第二四半期「当期純利益」ランキング

以前不可解なモノとして電気料金関連を自分なりに理解出来た内容の記事を上げましたが、上がり下がりの動きが激しい電力業界の業績を見るに付け、10社それぞれの経営状況は専門家なりに委ねるとして、一個人からみた全体像と言うか日本の電力業界がどうなっているか、我々一般利用者への影響、個人的な今後の見通しと自衛手段等について書いてみようと思いました。

電力10社各社の実績は、本稿最後に各社のIR情報のURL載せておきますので、参考にしてください。

1.電力10社業績(合計)と燃料費推移

各社赤字に転じ始めた2021年度から黒字転換する2013年度上期までをグラフにしてみました。

2021年度(2022年3月期)に営業利益赤字だったのは東北電力、中部電力、北陸電力、中国電力、四国電力の5社で、他の5社は黒字ではあるが全て減益。迎えた2022年度(2023年3月期)は中部電力以外9社営業利益▲2~4%の利益率で沖縄電力に至っては▲22%という赤字になった。各社の決算概要を見ると2022年度は急激な燃料コストの上昇と燃料調整費回収の期ズレに因るとなっている。次項2.で書きますが、営業利益率▲22%の沖縄電力の状況は首を傾げたくなる結果である。

また、少々乱暴な試算であるが、各電力会社の実績から見た販売単価を試算してみた。

各社2021年度(2022年3月期)より2022年度25~58%と大幅に販売単価が上昇。2023年度(第二四半期まで)は各社まちまちであるが全国レベルで見れば0.6%低下となっている。燃料の市場価格、為替共に落ち着き、電気料金値上げ効果もあり当期は全社黒字化に転じた裏付けとなっている。利用者にとっては燃料調整費がマイナスの恩恵があるにしても電力単価が上がり高値で留まり、生活が楽に感じることは無い。

2.沖縄電力の燃料単価

他社よりも早く原発再稼働させた関西電力、四国電力、九州電力の基準燃料価格(平均燃料価格)が26,000~27,400円、原発未稼働の他社が80,000~86,000円で1/3程度に収まるのはそうだろうなと思えるが、原発自体持っていない沖縄電力が25,100円、上限37,700円に設定というのは相当の驚きであった。2021年度第二四半期以降基準価格25,100円を超えたままであり、同年度第三四半期以降は上限の37,700円越えが続いている。22年度(23年3月期)484億円の営業利益赤字、利益率▲22%になるのも頷ける。2023年5月値上申請が通り、基準価格を81,500円、燃料種類毎の係数(α、β、γ)を見直した単価で燃料調整費を算出するようになっているものの、2022年度中の値上及び基準価格の見直しは出来なかったのだろうか。業績に大きな影響があっても自社だけではどうにもならなかったのだろうか、一般企業とは異なる独特の世界観があるように思えてならない。

3.電力事業について

現状、安定した電力供給を果たそうとしたら火力発電以外は考えられない。燃料の97%を海外に依存しているため政情、産油国の思惑、環境変化等様々な要因で調達コストが読めないことが多い。2022年2月ロシアのウクライナ侵略は国のインフラを司る省庁には重い課題だったように思う。有事の際、高い安いの話ではなく供給責任を果たし如何に国民=利用者を守るかが最優先であり、利用者としても負担が重くなることは理解すべきであろう。とはいえ、電力供給する側の経営状況が企業存続を疑われるようでは困る。また、電力の自由化が始まって以来誰のための自由化だったのだろうかと思っている。燃料価格が安定している時は従量電灯よりも自由プランが有利だと変えてみたら、燃料価格が高騰し調達コストが上昇、その影響を従量電灯よりも自由プランが大きく受け、料金の逆転現象も起きる。電力会社は勿論業績に影響を受けるが、値上げを行い利用者から回収すれば期がズレてでも挽回出来る。電気のある生活が当たり前となり、利用量に応じてとはいえ一種の税金のように思えてならない。批判覚悟の上で敢えて言うなら、資源の無い我が国が進めるべきはやはり原発だったのではと思う。安全第一は言うまでもないが、2011年の事故以来相当安全に関しても学んだはずであり、予防策にしても現状考えられることはほぼやり尽くしているのではないだろうか。関西電力、四国電力、九州電力は稼働出来ている訳だから、それに準じた設備は稼働させ安定供給とコストダウンを図るのが企業のみならず利用者にとって何よりのはずである。太陽光、風力発電で山林を切り開くより環境に優しく、設備廃棄=廃炉に関しても高いレベルで行程が確立されている。むしろ再エネ設備の方が廃棄方法含め将来のリスクが大きい。まだ確立されていないものに生活の基盤として頼るのはどうなのだろうか。人だけではなく動植物といった生態系の保護の観点から見ても原発の方が少しはマシなように思う。チェルノブイリ、スリーマイル島、そして東日本震災の大きな事故の影響で原発にアレルギーを持つ人が多いのは認識している。海外の事案は人的ミスに因るもので、日本はこれらから学び安全な運転をしてきた。2011年の震災時には不幸な事故ではあったが、時の政権民主党と本店(東電)がどのような行動を取り、現場を混乱させたか等学んだことは多いはずで、二度と起きては欲しくないが、次への備えは出来ているものと考える。加えて将来化石燃料が枯渇した場合、再エネと言われている太陽光、風力は代替エネルギーとして確固たる地位にあるとは思えないし安定電源とは言い難い。無条件解禁には賛成しかねるが、原発から将来の電源として有望な核融合発電の運用への応用のためにも原発の通常運転はやっておくべきである。また、将来どのような発電が生まれるか分からないが、以前何かで読んだ宇宙空間での発電、電波送電も理論的には可能との事なので、個人的には実用化を待ちたい。近年EV普及の余波とでもいうか、蓄電にも注目され色々な取り組みが紹介されている。蓄電器(池)の原材料供給は政治色が濃く難題が多いかもしれないが、まだまだ改善の余地があり、それらを克服して普及する事を期待したいところである。政府主導のデフレ脱却が進められあらゆる物の価格が上がり、むしろ買い控え傾向にあり思ったよりも消費が伸びない、暮らし向きも悪くなったと感じる人が多いようである。内閣府消費動向からも見て取れる。

内閣府消費動向調査2023年11月

賃金上昇の効果はこれからとは言え、これといった産業の無い地域、年金生活者など低所得層にとっては対岸の出来事、生活の質が上がる実感はないだろう。その中で必需品と言える電気代がインフレ状態になれば生活困窮に拍車が掛かる。自衛手段を持たないと生きる事さえも諦めるしかない。電気代=発電コストが市況に左右されるのではなく、全国民が人として生き続けられる政策を進めて欲しいと願うばかりである。また、地方には無くてはならない自動車、バイクといった移動手段の燃料についても生活に困窮する高価なモノであっては困る。二重課税にも甚だ疑問であり、合わせて国民目線の政策実現を期待したいのだが、今の日本が真っ当な国ならそれも難しくはないと思うのだが。

4.燃料代市場価格と今後についての私見

電気は目に見えない。電気を製品と捉えた場合、火力発電の原材料は化石燃料である。原材料コストに製品価格は左右されるのは極当たり前なのだが、一般的な製造現場は原材料価格を製品に簡単に転嫁せず、事前に在庫を積み上げ価格を抑える、代替品への切り替え、切り替え可能な材料の検討など時間的な猶予はそこそこあると考えている。電気に関して言えば石油備蓄法があるとはいえ、時間的にも猶予が十分とは言えず、まして代替品への切り替えは簡単ではない。当然ながら市況の影響は大きく、利用者として影響を避けられず、どのように変わっていくのか興味を持って情報収集し来る変化に備える。仮に市況が急騰した場合、電力会社は(というか政府の指導かと)生活への影響を考慮し一気に上げることは無く段階的に上げ、その間赤字計上しても看過するより他無いのだろう。

2021年度以降の燃料市場価格と為替レート(ドル→円)

この動きに関して説明は不要と思いますが、主だった出来事として2022年2月、産油国であるロシアのウクライナ侵略による燃料調達の混乱と価格急騰、為替については日米の金利差が主要因と見られています。100%外因に左右される燃料価格が我が国の火力発電コストの実態です。電気供給は発電するしかなく、燃料も供給し続けなければならない。電力の70%超を火力発電に頼っている今、将来的には原発の比率を現状5%弱から10~15%程度に、火力発電燃料は日本近海に眠っているメタンハイドレート活用を実現、水素生成と保管技術の確立、蓄電技術の進化と普及等で自国産エネルギー比率を上げ世界情勢の影響を下げる。供給、費用とも安定することにより暮らし易さを実感出来る。資源エネルギー庁のエネルギー基本計画がどこまで実現出来るか未知数ですが、変な補助金に予算を使わず経済安全保障の観点からも可能な限り予算を投入し実現して欲しいものです。

参考:資源エネルギー庁第六次エネルギー基本計画

各社の決算短信含めたIR情報のURL以下になります。

北海道電力東北電力東京電力中部電力北陸電力関西電力中国電力四国電力九州電力沖縄電力

 

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