不可解なモノ その5 電気代まとめ

電気料金

これまで学んできた電気料金の仕組み、制度のまとめをします。

基本料金+電力量料金だけではない仕組みについて深堀をしてきましたので、初めに電力大手10社を利用した場合、具体的な数字を使って比較していきます。

1.電気代試算及び比較

試算条件 契約:従量電灯B、30A 使用電力量:350kWh 請求月:2023年11月分

基本料金+電力量料金+燃料費調整(±あり)+再エネ賦課金を消費税込みでの合計額を比較する

試算結果下表になります。

数字だけだとイメージし難いのでグラフにします。

最安の関西電力と最高の北海道電力では月額4,263.5円、年額にすると51,162円の差になる。ビッグマックの価格が450円とすれば(一部500円もあるとか)、関西電力ユーザーは北海道電力ユーザーよりも月に10個ほど多く食べられるということになる(そんな単純な話ではないのですが)。

各社並べて気付いたのは、燃料費調整額の低い電力会社が電気代が安い傾向にある。関西電力、九州電力は原発稼働の効果であると思うし、中部電力については、2019年火力発電事業を分割し㈱JERAに継承したため影響が小さくなり電気代も抑えられるようになったと思われます。今の燃料費調整の制度が続く限り3社以外の電気代の振れが大きくなるのは避けられない。電力販売の自由化が2016年から始まっていますが、全国どこでも制約無しで安い電力会社(プラン)と契約できる制度ではなく(会社によってはエリア外への販売をしていない)、また、販売するにも認可・許可の壁も低くないため、ユーザー側が安価な電気の利用が自由に出来る状況に無い。ユーザー側としても生活するうえで電気の供給は安定していて欲しいし、仮に停電しても復旧時間が早いに越したことはないので、安易に価格面だけで電力会社とプランを選ぶことは無いというのも、現実的なものだと思います。

電気代の安いプラン、電力会社(制約があるにしろ)を選んだとしても、電力会社の経営自体に問題があれば安定した供給、停電時の早期復旧等ユーザー側が不便と感じるのでは拙い。過去の経営状況を電力会社毎に少し見てみたい。

2.電力大手10社の収支状況

2023年3月の電力大手10社中8社純利益赤字。その大きな理由は燃料価格の高騰分を価格転嫁できなかったと言われています。同時に為替も円安に振れたことも大きかった。先ずは各社の過去15年の推移をみてみます。

過去15年の各社売上と利益 北海道電力~沖縄電力

各社期毎の売上の振れは大きくないが、2022年度は燃料費調整額が上がったため売り上げが増えた。しかしながら最終純利益は見ての通り。価格転嫁が追い付かなかったというのが各社の発表。仕入れと販売、回収までの時間差があるため、避けられなかったといえばそうなのでしょう。*一般的には、納得のいく理由があったにしても、それをも超えて利益を出し株主に還元しなければ責任問題に。赤字は大罪*

地域的なものもありますが、この15年間で言えることは2011年3月の大震災とその後の原発停止が経営に大きな影響を与えた、でしょうか。2011年から凡そ5年後の2015-16年原油価格下落により利益が出るまで10社中8社が大きな赤字を計上することになる。また、直近では昨年2月ロシアがウクライナへ軍事侵攻し原油価格が急騰。加えて円安加速もあり燃料調達価格が高騰、価格転嫁も遅れ2022年度(2023年3月期)は10社中8社が赤字という結果に。それを可視化したのが、前回も掲載しましたが市場価格と為替の推移となります。

燃料調達コストと電力量料金単価

燃料市場価格がドルベースだけでは調達価格が分かり難いので、円ベースでも推移をみました。

これら調達価格と連動する電力量料金単価(円/kWh)の推移も合わせてみてみます。

長らく単価20円/kWhを割り込み10円台後半で推移していたものが、東日本大震災後の原発停止、原油の高騰、円安といった情勢変化等で燃料調達価格高騰、単価も34円/kWh超で倍近くになってしまい、改めてエネルギー自給率が低く、自国でのコントロールが思うようにいかない日本、生命線を他国に預けてしまっていることを思い知らされる結果である。

まとめ

太陽光、風力といった自然エネルギー発電比率が20%を超えたとはいえ、火力発電比率が未だに50%を大きく超えている。資源の乏しい日本は燃料を海外に依存しなくてはならず、燃料調達価格で電気代が決まってしまうのは避けられない。日本だけでは、というよりユーザーがいくら努力しても思い通りに行くはずもない、俎板の鯉状態である。脱原発の柱として自然エネルギーの活用を進めるのは良いとして、普及に拘わる費用は「再生可能エネルギー発電促進賦課金」名目でユーザー負担としている。どこまで普及すればこの賦課金が無くなるか不明であり、制度が続く限りユーザー負担。一方では自然破壊も深刻な問題として顕在化している。全てがそうだと言わないが、自然エネルギー発電所周辺が災害に強い対策を取っているように見えないし、十分な環境調査と実態に合った保全を行って敷設しているとは思えない。普及ありきで、或いは何か目に見えないモノの為に普及の名の元に急いでいると感じる。また、火力、原発に限らず発電設備の廃炉(設備なので避けられない最終処分/処理がある)があり、その費用は基本電力会社というか発電事業者が行い、その行程もその先の処分等もどうなるのか見えるようになっている。しかし、自然エネルギー発電設備に関する廃棄・リサイクルについて、資源エネルギー庁より「再生可能エネルギー発電設備の廃棄・リサイクルについて R5.4月」が出ているが、内容的には業者任せのように見えるし、他国の推進状況をみながら決めていくといった消極的な内容が多い。エネルギー問題は現代の生活を営む上で必要不可欠であるが、やりたい事だけ先にやり、問題・課題の解決、論の通った筋道を書かずにユーザー負担だけを強いるやり方には「不可解なモノ」としか感じない。重要な社会インフラを担う電力会社を潰すわけにはいかないだろうが、その負の部分をユーザーに転嫁し事業継続、正の部分、つまり利益が出たところでユーザー側には還元されるものが無い。困ったときのユーザー頼み、利益が出たら企業努力(自分たちのお陰?)だと。

この先は。

電気代に限らず、高いとか、制度/仕組みが悪い等と騒いだり、到底敵わないモノ、目に見えないモノに不満を言うだけでは何も解決しない。自分で何が出来るか、が肝心。電気代に限れば節電といってもやることは限られているし、でも最近興味を持っているのは、太陽光パネルと蓄電器の設置。これらは以前より手の届く価格帯のものが出回っており、そこそこの電力は自前で賄えそうである。費用対効果が見込めるのであれば、是非自家発電に挑んでみようと思っています。当然これら機材は愛国心を持ってMADE IN JAPAN、日本製を選ぶつもりです。安全・安心あっての自家発電ですので。

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