健康有っての人生

健康有っての人生

偶には「健康」について考えてみた。歳を取るほどに歯の有難みがしみじみ分かる。美味いものをしっかり噛んで食べられる事は、喜びであり、生きている実感がある。

不摂生、歯痛との闘い

若い頃、と、歳を取った言い方はしたくないが、食べたいモノを食べ、飲みたいモノを飲んで、食欲の赴くまま口にしていた。30代でBMI値が30近くあり、ボトムスのサイズは34インチ~36インチを着用。180㎝の身長にしては、見た目肥満体とまではいかないが、まあまあお腹が豊かに見える外観であった。年々健康診断の数値が悪化していくのは、紛れもなく肥満から来るものであろう。40代に入って間もなく、右足首に激痛が走り歩けなくなった。診断の結果、然るべくして痛風持ちになってしまった。血糖値、肝機能も酷い結果で、10年以上不摂生を続ければ、こうなりますという見本みたいなもの。身体の数値以上に、この時期大変だったのが歯痛に悩まされた事。小さい頃から歯医者が嫌いで、40過ぎ迄歯医者に行った記録は僅か一回。小学生の頃、乳歯から永久歯に生え変わる際に1本だけ抜け切らずに、父親が見兼ねて嫌がる自分を無理矢理連れて行ったのが、初めてにして最後の歯医者経験。それ以降歯痛が有っても、気力で乗り切ってきた。しかし海外生活を続けている中で、何度か繰り返される歯痛は何とも厄介で、痛みが治まっても、短期間でまた同じ場所の痛みを繰り返す。唯一の経験で受けた歯医者の印象が悪く、且つ、東南アジアの歯科医療レベルを知らないと言うか、もっと酷いものと思い込んでいたので、歯の治療には出向く事は無かった。しかし、このままにしていたら生活もままならない事になり、42歳の春、意を決して一時帰国の際治療する事にした。僅か1週間しかなかったが、その間どれだけ出来るのか分からないが、とにかく自宅近くの歯医者を訪ねた。状況を話して得た回答は、虫歯治療2本抜歯2本である。抜歯は2日空けて1本ずつ。虫歯の治療は毎日、削りと穴埋めを行い、何とか離日するまでに終える事が出来た。治療の2本に詰めたものは、仮のもので何年も持たないから、次の一時帰国の際一本ずつでもいいから冠を被せた方が良いと言われていたが、多忙を言い訳にそれっきりとなってしまった。

いよいよ本格治療へ

決断そして決行

その後歯痛に襲われることは無かったが、静かに歯周病が進行している事に気付くのは、60を過ぎた辺りからである。目覚めた時口の中が粘る感じと言い、歯磨きした時の出血と言い、傾向はあったが連日その症状を自覚する事になる。また、一部歯茎と歯の境辺りがえぐれた様に減っている事も気付く。何かで読んだ、ティッシュペーパーを使用する、自分の口臭テストを試したら、ここでは書けないような異臭。このことから、間違いなく歯周病に侵されている事を自覚。かといって、直ぐに治療に向かう訳でもなく、数年を過ごしてしまうが、リタイヤを決め本帰国後歯医者通いを始める。昨年7月の事。しばらく無職でいる事を決めていたので、時間は有り余っている。好きな時間に予約し、治療後は美味いものを食べ歩いたり、本屋さんで立ち読みしたり、今まで出来なかった事を思う存分楽しんだ。それはそうと、歯医者で初診の際言われたのは(ある程度予想はしていたが)、よくもまあここまで放置したものだと。治療方針としては、奥歯、親知らず歯の歯周病に侵されている歯4本は抜歯、擦り減っている歯は冠(クラウン)を被せる。抜歯は良いとして、冠は元の歯を削り型を取る(その前にレントゲン写真撮る)。仮歯を作り入れて嚙合わせ調整、そして数日様子を見て冠を入れる。入れた時に、仮歯同様噛み合わせ調整。この作業に加え、歯茎との境界部の擦り減っている箇所の補修を行い、最終的に7か月の時間を要した。図は歯の治療履歴みたいなものです。

:黄色星=右下6、7,8番、左下7番は30代の内に抜けていたもの。左下6,8番は40代に一時帰国時に抜歯したもの。因って、昨年歯医者通い始める時点で、下の奥歯左右6番以降は既に無かった。

:オレンジ星=今回の治療で抜歯した部分。左上7,8番を始めに抜歯。その理由は6番が少し歯周病にやられていたが、根がまだしっかりしていたので、抜かずに歯石を奥深い部分まで除去して活かす。6番を活かせれば4,5番と合わせた3本一体の冠に出来る為であった。歯石を深く除去するのに、麻酔を打ってくれたので除去時の痛みは無かったが、麻酔が切れた頃やや違和感が有った程度であった。中には酷く痛む人も居ると聞いていたが、人それぞれという事だろう。

:青丸=冠(クラウン)を被せた歯の位置。上述した左上4、5、6番は一体化させた冠で、その他は単独で被せる治療となった。削って型取り、仮歯を入れ嚙合わせ調整、翌週冠を被せ嚙合わせ調整の繰り返し。この作業が約30週間続いた。

冠を被せる作業が半ば程くらいになると、顔の歪みが修正されていくのが分かった。奥歯が無い弊害だと思うが、食べ物を噛む時右側に力が入る癖が有り、右の歯特に4,5番で噛む事が多かったせいで、右上2番から5番まで相当ひどく擦り減っていた。その為、右側口角が下がってしまい、また、鼻の筋と口の角度が直角に交わらない、顔全体も歪んだ感じになっていた(元々出来の良い顔立ちでは無いので、あくまでも私感としてなので)。パスポート、VISA更新で撮った証明写真なんかは、全て歪んだ顔になってしまっている。それが、歯の修正が進むと、鏡に映る自分の顔が、口角が少し上がり穏やかな顔つきになっていたのには嬉しいやら驚いたやら。歯の不調を放置していた自分を、何故もっと早くに治療しなかったと、少し責めそして後悔した。穏やかな顔をしていたら、何か良い事があったかという訳でもないが、鏡の自分を見ても不機嫌そうな顔だなぁ、と何度か思ったもので、いつでも穏やかな顔に見えたら、自分の気持ちも少しは穏やかになれたのではと思っただけである。

歯を慈しむ

歯の治療をしている合間に、歯磨きの指導もして頂いた。歯茎の境目に見られる歯の摩耗は、歯ブラシを強く当てている為だとの指摘を受けた。また、歯垢染色液(プラークチェッカー)で磨き残しのチェックをしてもらったが、多少歯磨きには自信が有ったのだが、見事に打ち砕かれた。奥歯の磨き残しが多く、特に歯間に酷く残っていた。普通か硬めの歯ブラシで、力任せに歯磨きした気になっていただけで、効果的な歯磨きが出来ていなかった証拠を突き付けられた気がした。歯のエナメル質は歯茎側に行くほど薄く、象牙質自体は硬く無いので、一気に摩耗が進行すると教えられた。歯磨きの力加減が今一分からなかったので、広告に出ていたカチッと音の出る歯ブラシで、力加減を学習する事にした。下図ライオンの歯ブラシ。試してみると見事にカチッと折れた。折れない様に意識して磨いたが、本当に磨けているのか気持ちがよろしくない。とはいえ、良くないという事を続けるのもどうかと思い直し、力加減に慣れるようにした。

合わせて歯ブラシも細くて軟らかめを選び試してみた。以前の磨き方だと、3週間もすれば図のように毛先が広がってしまう。今回別タイプとは言え、軟らかめを使ってみたが、力加減を変えただけで3週間経っても、少し傾きが確認出来るが毛先が広がる事は無かった。

以前(力任せ?笑)  改善後

改善後使用しているサンスターの歯ブラシ#166S

こうした日々の努力?のお陰か、最初のプラークチェックから2か月後には、見事に磨き残しゼロとなり、助手の方からも褒められ、この歳でも褒められると良い気分になる事を自覚した。大した事では無いにしろ、責任有るポジションに就いて20数年、小さな事でも褒められて気分を良くした思い出は無い。評価される事は有ったが、それは計画に沿って成果を出したものであり、部下を引き連れていては、自分が努力しただけで成し得ない事の方が多い。妥協せざるを得ない事も多い。今回は自分の為だけに考え、色々工夫した結果だったので、たかが歯磨きではあるが、やってみて成果を出し褒められる。なんだか懐かしい、小学校時代、いやもっと小さい頃に戻ったような感じでもある。

改善後使っている歯ブラシの先を見ると、歯間に届かない様に見えるが、軟らかさの為か結構これが歯間まで入っているようで、プラークチェックで液は残っていなかった。しかし、念には念を入れる為にと歯間ブラシの使用を奨められた。食後フロスを使う事は多いので、それでもいいかと思ったが、歯間ブラシの方が歯と歯茎の境目にとっては、有効かと思い歯間ブラシも併用するようにした。2回目のプラークチェックからまた2カ月後、前回より更に良く磨けていると褒められ、またまた木に登る(豚も煽てりゃ何とかW)気分に。いくつか試した中で、価格、使い心地の良いモノ、サイズ違いで二種類を使用している。ゴム製も試しに使ってみたが、奥深く入る感覚が無く、使用感が今一だったので使わずにいる。

 ゴム製   サイズSSS   サイズS  

歯の治療を終えて

歯の治療は一旦完了し、3カ月後に冠を被せた歯、及び他の歯含めコンディションチェックとなります。

治療してみて、自由に使える時間が十分に有った為に出来たと言えるが、生来面倒臭がりの自分が意を決して治療に取り組んだのは、今となっては非常に良かった事だと思う。先に書いたように、人相というか顔の印象が変わった事も大きいが、何より以前ロクに噛む事が出来なかった肉を、美味しく食べられるようになったのは、一番大きな変化だと思っている。肉に限らず、十分噛む事でこれまでと違った満腹感も得られるようになった。これまでは歯の状態が悪く、噛むのを諦め丸呑みする事もあったが、今では十分噛めるので、胃腸に与える負荷も随分軽くなっているのではないか。食べ物の味にも、変化が出ているようにも感じる。晩年を迎えている中で、食べ物が美味しく感じられるのは、生きる楽しみでもあるし、もしかするとこの上ない幸せではないだろうか。また、起床時の口中のネバネバ感が無くなり、口臭チェックでも異臭が消え、改善が実感出来たのは非常に気分の良いものである。

印象的だったのは、歯科医師の技術力が格段に上がっていると感じた事。痛みと言えるような痛みを感じる事が無かった。抜歯後の縫合、抜糸に至っても、何も感じないまま終了していた。記憶の隅に歯医者は痛いもの、が、全く覆ってしまった。治療一点一点丁寧であるし、何をするにも声掛け、説明をしてくれる。いつからか知らないが、このような事情であれば、もっともっと早くに治療をしておけばと後悔もあり。医学、医療の進歩は、これまで内科に通っていて感じていたが、歯科医療がここまでとは知る由もなかった。この先楽しむために、痛いのを我慢する事を止め、早く正常に戻して、美味いものを美味いと感じられる生活を、送れるよう過ごしたいと思った。

余談であるが。

本帰国後、義務と思い込みマイナンバーカード(マイナカード)を作成した。紙の保険証が不要になるのであれば、それに越した事は無いと考えたが、マイナカードが手元に届いた後健康保険と紐付けを行ったにも拘らず、紙の保険証が届き、何で二重の保険証を持たなければいけないのか、理解に苦しむと同時に、国のやる事は無駄が多く、これではいくら金が有っても(税金をいくら取っても、とも言える)、暮らしが楽にはならないだろう。それとも、マイナカードに関係する利権絡みかと疑いたくもなる。歯医者に通っている7か月間、毎月初めの診察時に、紙の保険証の提示を求められた。マイナカードでの登録もしておいたが、歯科医院の方曰く、使い物にならない無駄な機械を買わされた。詳細は聞いていないが、私のマイナカード登録時に、リーダーとPCの通信がうまく行かないのか、或いは読み取ったデータの処理がうまく行かないのか不明だが、手続き完了まで結構な時間を要した。厚生労働省のH.Pには、良い事尽くめの解説が載っていたが、実際利用する側に立ってみれば、その乖離が大きいという事なのだろうか。最新の総務省のデータでは、令和5年12月末で9154万枚の保有枚数で、73%の普及率とある。一方、厚生労働省のH.Pにある国家公務員共済組合の利用率が、全体で4.36%。全国民の保有枚数に対する利用率ではないので、精度の程は不明であるが、凡そ傾向としてこのようなものだろう。非常に乱暴な計算をすると、9154万枚の内、有効活用されているのが399万枚しかない事になる。2016年(平成28年)から開始され7年が過ぎても73%の発行率と4%台の利用率。投入された予算が2兆円を超えるとの報道を見たが、これを無駄と言わずして、何を無駄と言いうのだろうか。電子化が先進国の中で遅れているとか言われているが、国民が望まない電子化をやったところで、うまく行くはずがない。デジタル庁の説明では、マイナンバーは「行政を効率化し、人や財源を国民サービスに振り向けられること」を一つ目のメリットとして挙げている。果たして、その方向に向かっているのか、甚だ疑問である。他所の国は他所、日本は日本で良いのではないか。話しは反れるが、震災、水害などで被災した個人開業医が、資金の目途が立たず廃業する例を見る。このような無駄遣いをするのであれば、こうした地域の医療を担う個人開業医等が、被災から復帰する為の費用に使った方が、よほど国民の為になるのではないか。廃業する医師から他の病院の紹介状をもらっても、交通手段の確保が難しいとか、紹介された病院では合わないとかで、不便と感じる方が居るだろう。昨年夏以降の自然災害を見るにつけ、「日本の医療とは」を考えさせられる場面が多い。

 

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