電力大手10社2023年度第3四半期決算発表
2024年1月末、電力大手10社より2023年度第3四半期の決算が公表された。各社の売上、営業利益、販売電力量をグラフにしてみました。
1.各社実績と推移
概ね、販売電力量と売上は連動していて、本業の儲けを示す営業利益は各社特色のある結果のように見えます。化石燃料に頼っている電力会社は、利益が低いと言うか薄い感じで、原子力発電所が稼働している関西電力、九州電力は利益率が良く見えます。ただ、化石燃料に頼っている電力会社でも、価格が下がる傾向にある石炭使用比率が高い電力会社は、やや利益率が高い傾向にある。
10社全て黒字になってはいるが、第2四半期に対して4~14%利益率を落としている。大きな要因は、石炭以外の燃料調達価格(CIF)が上昇傾向にある事(下表参照)、国の「電気・ガス価格激変緩和対策事業」の補助額が、第2四半期7円/kWhだったのが、第3四半期は3.5円/kWhと半額になった影響があるとみられる。また、燃料価格は三か月平均価格を、二カ月後に反映させる仕組みであるため、月ズレ、期ズレが発生するので、短期間の結果で良い悪いと判断は出来ないが。
*おさらいとして、国の「電気・ガス価格激変緩和対策事業」の補助額を簡単に。
2023年2月~2023年9月分電気料金:2023年1月から2023年8月使用分=補助額 7円00銭/kWh
2023年10月~2024年5月分電気料金:2023年9月から2024年4月使用分=補助額 3円50銭/kWh
2024年6月分電気料金:2024年5月使用分=補助額 1円80銭/kWh
2.2024年3月期業績予想
2024年3月期の連結業績が、概ね予想通りとしている企業が多いが、北陸電力からは「親会社株主に帰属する当期純利益について、2024年1月1日に発生した「令和6年能登半島地震」の設備復旧にかかる費用等が未確定であるため、未定としております」とのコメントが出されている。
また、東京電力からは「ALPS処理水放出に係る賠償額の総額を見積もる事が出来ていない事などから、2024年3月期連結業績予想は現時点で未定となっている」旨のコメントが出ている。
東京電力のケースは現在進行形なので、これ以上は書きませんが、気になるのは2024年1月1日に発生した能登半島地震の影響。北陸電力のニュースリリースを中心とした情報を拾い上げ、まとめてみました。
令和6年能登半島地震の影響
1.停電軒数と復旧状況
発生から一週間後に50%程、一カ月後に90%以上停電解消となっている。
復旧には多くの人員が投入された。発生から2日目である1月3日から復旧作業が始まる。北陸電力と協力会社で345名、中部電力パワーグリッド、関西電力送配電から115名、計460名。北陸電力のニュースリリースで見ると1月3日から30日までの27日間作業が行われている。自社、協力会社で一日400名、応援要員が600名で連日1,000名となっている。単純計算になるが、この期間に投入された人日は26,306人日、一日の作業時間は8時間という事は無いと思うが、仮に8時間程度と見た場合約292カ月、約24年間分の作業時間となる。これを各社が応援要員を出す事に因って、僅か4週間程度で96%の復旧率に出来たのは、普段より自然災害に備えたネットワーク構築と派遣された方々の日々の研鑽(作業の標準化含め)、技術力の高さと言える。また、送配電網協議会がまとめている、災害復旧に応援要員として派遣された延べ人数、発電機、工事用車両等について詳しい資料が有りますので参考にして下さい。→令和6年能登半島地震に伴う復旧に向けた電力各社による応援派遣の状況について
2.設備被害状況
調査が進むに連れて、被害の拡大が確認出来ましたが、先ずは身近な電柱など配電設備に関して、北陸電力が発表した状況を集計しグラフにしてみました。
他の設備に関しては次のような状況でした。
送電設備:変電設備は一部で破損等を確認
発電設備:水力設備異常なし、新エネ設備:パネル等に損傷を確認
火力設備:七尾大田火力発電所1・2号 設備故障多数、他の火力設備については一時停止し点検、補修実施後1月8日までには再度稼働済み
原子力設備:志賀原子力発電所は、定期検査により停止中であり、外部電源や必要な監視設備、冷却設備等については機能を確保している。発電所に設置しているモニタリングポストの数値に変化はなく、外部への放射能の影響は無いとの事。また、変圧器周辺の側溝、道路で僅かな油膜が確認された。発電所前面の海面上に油膜(約5m×10m)が浮いていることを確認され、中和剤等による油膜の処理を行いました。となっている。
その後度重なる余震が発生していますので、状況は変わっているようですが、志賀原発に関しては、北陸電力より2024年1月月報としてH.Pに掲載されていますので、下記URL参考にして下さい。
https://www.rikuden.co.jp/press/attach/24020902.pdf
被災されました方々へ、心よりお見舞い申し上げると共に、復旧作業に携わる全ての皆様の、安全を祈ります。
2024年4月1日から、また新たな制度が始まります。
次回は2024年4月1日から適用される「発電側課金」について、我々の生活にどのような影響が有るか、或いは電力会社の業績への影響なんかをまとめていこうかと考えています。
資源エネルギー庁資料 発電側課金の導入に向けた対応について
東京電力エナジーパートナー 低圧の料金メニューの見直しについて
が参考になります。