ゴルフに見る人間模様

ゴルフと人柄

世界的に見れば大小さまざまな争いが続いており、生活に直接影響するエネルギーと食料の供給が不安定、当然国同士の関係も不安定な時代ではある。そんな世の中で、身近なところを見てみると、10人十色、100人居れば100の個性を否定する事なく、うまくバランスを取りつつ維持しているように見える。ゴルフに於いても個性の強い人も居れば無い人も。40年間のゴルフ人生で出会った記憶に残る方々に付いて回顧してみたい。

1.無知(無恥)

先ず初めは、無知で無恥な[そのゴルファー]

グリーン上でボールマークを動かす必要が生じた際、指尺で移動先を決めるゴルファーに出会ったことがある。独特のやり方をする[そのゴルファー]に最初驚いたが、後に[そのゴルファー]のキャディが同じように指尺でマークを動かしたので、もしや[そのゴルファー]の先生はキャディではないかと思い、動作を気にして観るようにした。案の定ハザードの処置は出鱈目で、ボールが着水した横から打つようキャディに指示を受けていたり、ドロップせずキャディが適当にそこら辺に置いて、それを[そのゴルファー]が打つ、全てキャディに言われるままにプレー。グリーン上では、ボールのマークとピックアップ&プレースもキャディ任せ、加えてパターのヘッドの向きもキャディが教えている。[そのゴルファー]がゴルフを始めた理由は、仕事上必要なため上司の命令でとの事。当然向上心も無く、営業の立場上接待中心のゴルフらしく、20年位やっていても120前後。勿論ルール、マナー、エチケットなんて何一つ自分で覚えたものは無く、同伴者が行った処置を真似たり、キャディの指示通りにやって来たとの事。[そのゴルファー]は商社系の電子部品を扱う会社で、新卒、中途に拘らず営業に配属された者はゴルフ必須との事。それも数回レンジでボールを打たせて、接待ゴルフデビューさせていたようである。[そのゴルファー]は20年位のキャリアが有るということで、我が社の担当になり私との接待ゴルフをアレンジしたようである。しかし、あまりにも知らなさすぎるというか、知らないことを恥ずかしいとも思わない、[そのゴルファー]は語るに値しない。しかしそれ以上に[そのゴルファー]のレベルを知ってか知らずか、その商社もレベルが知れる。無理にゴルフ接待しなくても、他で良かったのに、と思っていた。

そういえば、確か他社のゴルフコンペに参加した際、偶然か仕組まれたか知らぬが、[そのゴルファー]と二回目のゴルフをすることになった。数ホール消化した頃、[そのゴルファー]の靴底が半分以上剥がれ、歩くたびにパコパコと音がして気になってしようがなかった。ハーフターンでプロショップに行ったので、買うか貸し靴に変えるのかと思ったら、なんと、靴紐で靴底を縛って来たではないか。当然踏ん張りが効くはずも無く、変な格好のフィニッシュを見せ続けられ、他の二人は笑いを堪えているのが後ろ姿からも見て取れた。キャディも時折大きな声で笑うし、雰囲気は悪く無かったが、何とも締まりの悪いゴルフだった。[そのゴルファー]曰く、バンコクには靴底を縫ってくれる路上の修理屋さんがいるから、コンペが終わったら持っていくんだとか。その後、同伴した他の2名の方々を[そのゴルファー]が食事に誘ったようで、商社系であり同じベンダーの立場という事もあり、良い話でも聞けるのかと期待していたようだ。会食に行ってみたら、ある宗教の話が中心で、最後に入信しないかと誘われ、歳もだいぶ若いという事もあり、その場で断れずに後日どうするか伝えるようにした。[そのゴルファー]にお断りを伝える前に、こちらにこういったことがあったと報告があり、同じ取引先としてあまり関わりたくないので、一言申し入れて欲しいとの依頼があった。言ってみればプライベートの事なので、こちらが口をはさむ事では無いが、依頼通り[そのゴルファー]の上司に、立場を利用した行為、相手が困るような事は慎むよう申し入れた。その後担当を代えたと連絡を受けたが、[そのゴルファー]の勧誘というか布教活動は下火になるどころか、あちらこちらからその様子が聞こえてきた。数年が過ぎ、気が付けばその噂も無くなり、その後[そのゴルファー]の消息も耳にする事が無くなった。

2.傍迷惑

次は、KYで傍迷惑な[その担当]

取引先からの伝聞。

ある家電メーカーの調達部門の役員は、男子がピンク色のウェアを身に付けるのが大嫌い。古くからその家電メーカーと取引の有る部品商社の事。日本から現地(タイ)に赴任した[その担当]が、挨拶も兼ねて役員と接待ゴルフをすることに。ピンクはNGであると[その担当]には上司がちゃんと伝えていたようだが、当日[その担当]が、あろうことかピンクのボトムス、ピンクのソックスを身に着けて会場へ。当然出だしから役員は不機嫌。[その担当]は空気を読む事も無く、ただ気難しい方?くらいに思っていた様子。そして決定的な場面は残り3ホール辺りで来てしまう。役員のティーショットが右方向に飛び出し、打った役員含め一斉に「ファー」の掛け声。しかし、[その担当]は一人で息が続く限り長々と「ファーーーーー」とやってしまい、役員も堪り兼ね[その担当]の上司に一言「終わったね」。後日お詫びに伺ったが、出禁解除とならず、面談を断られ、一つも仕事させてもらえず担当替えとなったとの事。

話がこれで終わってくれれば、何もここで[その担当]の事は書かずに済むのだが、取引先の方が前述の話に続けて、今度のコンペで[その担当]と私が同組だと。私は男子がピンク色を身に着けてもどうとも思わないので、別に何とも思ってもいなかった。当日[その担当]はピンク色を一つも身に着けておらず、4名で友好的な雰囲気の中でプレーは進行していた。ただ、「ファーーーーー」は聞いていた以上に耳障りな感じだったが。

あるホールで右から左に回さなければならない、いわゆるフックボールで攻めなくてはならない場面があり、打った瞬間背後から「ファーーーーー」とボールが左に戻って来ても叫び続けられた。キャディにつられて叫んだのかもしれないが、しばらく[その担当]を睨みつけ一言「何か問題でも?」。バツの悪そうな表情をして謝ってはいたが、同伴者が打った瞬間、どのようなボールが出ても「ナイスショット」の掛け声を出すところを見ると、状況判断も出来ない、相手を喜ばす、気持ち良くさせる、営業とはこうあるべきと教育された結果なのだろう。[その担当]の居る会社とは付き合いたくないと思えた瞬間であった。営業に何度か来たみたいだが、ニーズが無く取引には至らなかったのは幸いだった。

3.高学歴故か?

次は、高学歴であるが[残念なゴルファー]

ゴルフの腕前と学歴を並べるのはお門違いかもしれないが、仕入先の営業部門で責任者をやっていた[残念なゴルファー]のお話。

[残念なゴルファー]の出身は赤門で有名な日本で最難関大学である。ゴルフは会社入社後に覚え、キャリア25年程との事。取引先のゴルフコンペで数回一緒になったことがあるが、初めて[残念なゴルファー]と同組でプレーした時の事。ティーショットが反れて、少し深いラフ(ひざ下位)に入った。私ならウェッジでフェアウェイに出して、それからプランを考え直し、ボギーでOKとする。ところが[残念なゴルファー]はキャディの「残り180Y」に、あろうことか3Wを手にしてボールに向かう。ソールもままならないライで、当てる事すら難しいのに何度も打ちに行く。3Wを諦めたと思ったら5Iに持ち替え、再度チャレンジ。何とか前に進むもまだラフからは抜け出せず、キャディの「残り140Y」に6Iを持ち、また同じ事を繰り返す。上がってみれば14打であるが、本人は何度空振りしたか覚えておらず9打と申告。本人は誤魔化す意図は無いにしても、過少申告をやってはダメである。また、ラフに限らずバンカーでもキャディの言った距離を打とうとする。バンカーの縁やアゴ近くであっても、である。一度だけならその場はパニックだったのだろうと同情もするが、毎回同じ状況で同じ事を繰り返すので、経験から学ぶ事をしない[残念なゴルファー]なんだなと。

スコアを目指すなら目指すなりのマネージメントが必要である。最難関大学を出たのであれば、入る為のマネージメント、卒業する為のマネージメントをしてきたはず。学歴に関係無く楽しめるゴルフ、少ない打数で上がるゲームのマネージメントは、大学に入って卒業する事よりも容易な事のように思うのだが、[残念なゴルファー]にとっては大変難しいもののようである。同伴者が堪り兼ねて、ウェッジかピッチングでフェアウェイに出すよう何度かアドバイスしても聞く耳持たず。前の組に大きく離されようとも、とにかく選んだクラブでボールが動くまで振り続ける。ある意味、自分を信じ、脇目も振らず良かれと思う事をやり通す事で、高学歴を得たのかもしれない。そのように思わずにいられない「残念なゴルファー」との出会いであった。

ただ、どうだろうか、もし[残念なゴルファー]が仕事でも自分が良かれと思い、やり通す人間なら、必ずしも良い方向に向かう事ばかりではないはずで、その影響も小さくない気がしてならない。その影響ではないと思いたいが、[残念なゴルファー]の会社から、期限内に見積書を受け取った記憶が無い。3日ほど遅れるとの連絡が入る時も有れば、期限翌日何事も無かったように普通に出して来る時もあった。材料指定がある場合は、評価等で時間が掛る為、已む無く契約した事も有ったが、通常の納品も少しグダグダな所もあり、多少は影響しているのではと感じずにはいられなかった。

40年間ゴルフを趣味にしてきて、多分数千人レベルの方と出会い、同じ空間で楽しく遊ばせてもらった。今回の三例に限らず記憶に残る方々を、少しずつ紹介していこうと思います。

では、また次回。

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