続・ゴルフに見る人間模様

人間模様

前回は[無知で無恥なゴルファー][傍迷惑なゴルファー]といった、状況がどうあれ二度目は絶対一緒にしたく無いゴルファーのお話をした。今回は前回ほどではないが、可能であれば避けたいゴルファーに関するお話。

1.ゴルフとお酒

プレー後の一杯は格別で、どちらかと言えば好きな方である。

自分のプレースタイルとして、キザな言い方をすれば、ゴルフの神様に敬意を払い、プレー中は絶対に呑まないと決めている。好きなゴルフをさせてもらう感謝の気持ち、緊張感を持ったままプレーを終わらせたい気持ち、オンとオフのメリハリを付けたいといったところでしょうか。

昔話になりますが、ゴルフを始めた40年ほど前だと、国内では前半9ホールが終わり後半スタートまで短くて40分、混んでいると2時間以上、平均すると60~80分待ちだっただろうか。自然とレストランに向かい昼食を取る事になるが、後半2時間半以上のプレー時間を考えれば、ビール一本程度であれば抜けると思い、呑むプレーヤーが多く居た。仲間同士同じ車で来場したプレーヤーは、帰りの運転が無いので2時間以上の昼食時間が有れば、ビール一本で済むはずも無く、勢い日本酒、ウィスキー、焼酎にまで手を付ける人も居た。後半のスタートで、ふらついてまともに打てないプレーヤーを何人も見て、ゴルフの神様に申し訳無いと思わないのか、凄い嫌悪感を覚えた記憶がある。ふらつくだけならまだしも、乗っていたカートから落ちて怪我をしたり、気分が悪くなりグリーン上に吐く不届き者まで居た。昭和あるあると言えばそれまでだが、始めた当初より競技志向だった事と、好きな事をやるのにいい加減な気持ち、プレーに適さない体調でやりたくない思いがあったので、飲酒はプレー後気持ちのクールダウンとして嗜んでいた。その気持ちを持ち続けたので、生涯プレー途中での飲酒はしたことが無い。

 *SINGHA BEER JAPAN. H.Pより

海外というか東南アジアだと、日本と違いハーフで休まず18ホール連続で回るため、昼食で一杯というのは無いが、スタート時に缶ビール(タイでは写真のビアシンが定番)を手に来る者も居れば、途中の茶店全て(最低4か所はある)で缶ビールを吞む者、水筒で焼酎かウィスキーを持ってきて、茶店で氷をもらい自分ばかりか同伴者にも振舞う者、とにかくゴルフ場に来たら早朝スタートだろうが御構い無しに呑んでプレーする人が多かった。日本人駐在員が自分で運転する事は先ず無かったので、呑める環境だった事が大きいと思う。ただ、プレーを楽しみに来ているのか、呑むために来ているのか、どちらにしてもそのような方とプレーした時は、心より楽しめた事は無かった。ゴルフをするのに「こうあるべき」と言うつもりは無い。ただ、ゴルフが出来るという事は、それなりの収入があり、動ける身体がある訳で、ある意味奇跡であるし、その事に感謝しつつ出来るならゴルフにも謝意を示す意味で、プレーに集中し楽しんだ方がいい。アルコールを入れて、より楽しむという論も間違いではない。それなりの結果しか出なくても、楽しんだ結果だと受け入れれば文句は無い。しかし、そのような人に限って、結果に対してウダウダと、反省と言い訳を口にする。結果を求めるのなら考え方、行動に責任を持つべきである。己の誘惑に負け呑んでしまい、どんどん求める結果から離れてしまう。離れるからもっと飲んでしまう。悪循環を断ち切れずに一日が終わる。それを良しとせず結果の言い訳をするなら、どちらか一方を選ぶ事が、本人の為でもあると思うのだが。

2.パター

統計を見ていないので具体的な数字は分からないが、身の回りのゴルファーを見る限り、道具の買替はドライバー(1W)と同等か、次くらいではないだろうか。1Wは早いメーカーだと1年、遅いメーカーでも2年周期で新モデルを投入している。新モデルの謳い文句は「飛ぶ」に尽きる。現行モデルより15Y飛びました。なんてのは常套句。

ここで飛距離云々に突っ込みを入れてもしようがないので、これ以上書きませんが、では、パターはどうだろう?「転がりが良くなった」等はよく見るが、「2mの距離は絶対入ります!」とか、「5mの距離を前モデルより50%入る確率が上がりました!!」なんて謳い文句に出会ったことが無い。当たり前と言えば当たり前で、ゴルフで一番繊細なショットを求められるし、数センチ、場合に因っては数ミリの精度を求められる。そこには道具よりもプレーヤーの筋肉、筋肉を動かす神経、神経を司る思考、全身がその一打に最高の集中力を持って臨まなくてはならない。それを軽々に「入ります!」といったところで、実感できるプレーヤーが何人居るか。妄言と思われ、売れないのでは話にならないから謳い文句に出来ないのでしょう。個人的に思っているゴルフの醍醐味は、プレーしていても観戦していても、グリーン上でのプレーが、奇跡とも思える結果が出た時以上に、冷静にプラン通りうまく行った時だと思っている。奇跡を起こすクラブより、プラン通りのプレーが出来るクラブが、特にパターは大事だと思っている。1Wは相性、パターも相性は有るが、それ以上に信頼してどれだけ使い込んだかで、自分のやりたいパフォーマンスが発揮できる。アイアンセットからみれば、量販タイプだと安価であり、購入し易いことも一つの要因かもしれないが、少し使ったけど思ったより入らない、相性が悪いと言って変える人がいる。変えた直後はそこそこ入り、「これだ」と言ったものの、翌週にはまた別のタイプのパターを持っている。この手の人は、一つのパターに落ち着くことは無く、また、自分に「足りているモノ」「足りていないモノ」が分からず、一定レベルで成長が止まってしまう。仕事にも通ずるものであるが。。。浮気性というより、「隣の垣根が良く見える」そんな人が多いようである。

パターがうまい人

パターがうまいと感じた人、そしてスコアもうまくまとめてくる人の、道具の特徴とプレースタイルをまとめてみた。

①自分の身長に合った長さとライ角のパターを使っている。自然体でどこにも力が入っていない構えが出来、ヘッドとグリーン面が平行になっている。見た目も格好が良い。

②汚れの無い、使い込んでいるヘッド、そしてキレイなグリップ。

③プレー時以外常にヘッドカバーをして、アイアン等の打痕が付かないよう配慮している。

④打音の良いパターを使っている。道具も然ることながら、ヒットした時の音も良い。打つ距離に拘わらず乾いた音を出す。1m以内の短い距離でも芯で打っている音がする。

⑤自分の距離感を持っている。生まれ持ったモノも有るが、身に着けようと思えば、やり方次第で身に付くものである。振り幅が大事だと言いますが、個人的に思うのは、腕の振りのイメージと、打った瞬間指に伝わる感触を大事にする事により、距離感が磨かれていく。

⑥グリーンに上がったら自分でマークしてボールを拾う。この時に、着弾点からどのようにボールが転がったか見て、グリーンの傾斜等の状態を見る。そしてプランを考える。

⑦ホールアウトしたらグリーンから出て、他のプレーヤーの邪魔にならないようにする。スコアはみんなが終わった時点で次のホールに移動しながら記入する。

⑧グリーン上に限らず、ルーティンが決まっていて準備からプレーまでの手際が良い。

といったところでしょうか。

その逆+

逆にパット数の改善がうまく出来ず、スコアが伸び悩んでいるプレーヤーの特徴は、上記8項目の逆だと思ってもらえればいいのですが、それに加えて、

①自分でラインを読まずにキャディの言い成り。外すとキャディのせいにする。

②同伴者が打とうとしている時に、ライン後方から見ているマナー知らずのゴルファー。

③1パット打つごとに言い訳、解説をするゴルファー。

④まだ7~80㎝はあろう距離を、自分で勝手にコンシードしてボールを拾い上げる。

⑤入らないからと言ってブチ切れるゴルファー

・パター、キャディバッグ、ボールに八つ当たり。

・残り30~50㎝程の距離をわざと外し、行ったり来たりを繰り返し場の空気を荒らす。

・次のホールに向かわず、誰にも何も言わないで帰るゴルファー。

こうした伸び悩むゴルファーの行動は、会社内でそこそこのポジションに居て、部下はイエスマンが多く、何でも自分の意見が通る等、世の中も同じだと勘違いしている方が多いようである。

3.常識を疑う

日本人ではなく、タイ人のお話。

自分のクラブセットと言えば、長年ウッドは1W、3W、アイアン3~PW、54、58、パターの13本。時々コースに因って5WかUT-4を入れ14本の時も有るが、40年近く変わっていない。取引先のコンペで一緒になったタイ人はウッド系が多く、アイアンは7番からで、珍しくチッパーを入れていた。メーカー名も不明で、日本ではお目に掛ったことの無いクラブなので、また、どんな転がりをするのか気にしながら彼のプレーぶりを眺めていた。しばらくグリーン周りで使う様子も無く、いつ使うのだろうかと思っていたら、後半最初のパー3のティショットで、そのチッパーを持ったでは無いか。見間違いと思い見直したが、明らかにそのチッパーを持ってティーインググランドへ上がり、140Y有るか無いかだったと思うが、見事にオンさせてきた。彼の前に打ったので影響は無かったが、しばらく「嘘だろう!」が頭の中を回遊していた。彼の後に打っていたら、間違いなく動揺してオンさせる事は出来なかったはず。彼曰く、「このチッパーはグリーン周りで使う事は無い」と。苦手な130~150Yを色々試している内にこれに落ち着いたとの事。

タイガーウッズがグリーン周りのチップショットを3Wで打ったのを見て、真似てみたりUTを使ったりしていたが、さすがにチッパーで通常のショットを打つとは、打つ人が居るとは予想の範疇を超えていた。それもキレイな弾道である。仕事で散々常識に捉われるなと言い聞かせ、部下の指導もして来たのに、よもや自分が「常識を疑う」という教訓を、目の前で見せられるとは思わなかった。いやいや、大変な収穫であった。

また、その彼について他のエピソードも。前半の3ホール目だったか、彼がティーショットを打った瞬間、横の木々に止まっていた、中型のサギに似たような鳥が一斉に飛び立ち、その一羽に彼の打球が当り即〇。敬虔な仏教徒らしく、落ちた鳥にしばらく手を合わせ、キャディマスターを呼んで回収してもらっていた。回収していった後も元気が無く、もう一人いたタイ人に慰められていた。ただ、チッパーでワンオンしたパー3では、気分が良かったのか元気を取り戻したような雰囲気だった。

タイに赴任して間もない事も有り、タイ人って、生き物に対しても慈しみの心を持っているんだなと、少しは尊敬の念を抱いたものです。が、後にタイ人を見る目が見事に逆転する事になります。この事は別の機会に。

4.オリンピック

ゴルフの話なので、スポーツの祭典では無い事はご理解頂けると思う。色々なルールがありますが、オリンピック程ゴルファーとしての経験値、メンタルが出るのではないか。そして、仕事のやり方、成果とも共通している面もあると考えている。

①とにかくグリーンに乗ると「サオ」宣言するゴルファー

インドネシア駐在時に大変お世話になった取引先の社長。グリーンに乗り旗竿以上の距離が有ったら、どこからでも「サオ」宣言。当然端から端といった2~30mあってもお構いなし。無謀とも思えるサオ宣言ではあるが、本人曰く、命、全財産まで持っていかれる訳じゃ無し、入る可能性がゼロではないので挑戦しているんだと。確かに数多くご一緒させてもらったが、常にパット数は30回を下回ることが多く、ニアピン賞を取れなければ負ける事が多かった。特に感心したのは3パットがほとんど無いというか、記憶の限りだと見た事が無い。構えも自然体で、パターの打音が心地よく、お手本になるゴルファーの一人と言える。ゴルフが縁で取引が始まり、且つ拡大までさせてもらった中で感じたのは、取引開始に至るまでと取引拡大する際に、相当細かな要求を受け、初めて作成する資料なども有り大変な思いをした。しかし、ゴルフ同様準備に念には念を入れ、納得したら一気に決める。一部に異論を唱える者が居ても、自ら先頭に立ち指揮を執る。サオ宣言する時の顔だと感じたのは、私だけではなかったはずである。

その後も何人か距離に関係なくサオ宣言するゴルファーと出会ったが、結果が伴わない人が多く、仕事関係で一緒になる人も居たが、成果含め残念な方が多かった。っていうか、そういう人ばかりであった。が正しい。

*参考:旗竿の長さは7フィート(2.13m)以上を推奨している-JGAルールコラムより

②30㎝のパット

前半まあまあのペースでプレーをしていても、一つ歯車が狂い出すと思わぬトラブルを引き起こしてしまう。今日は生涯ベストが出るかも、本人だけではなく周囲も期待をしていたら、よもやの池ポチャ。それからもいくつかのトラブルに遭遇し、何とかグリーン上へ。意気消沈して打ったファーストパットは入りそうで入らず。残り30㎝、コンシード直前に本人「入れますっ!」、片手で打ちに行ったらボール手前でざっくり、微かにボールに当たり5㎝ほど動いただけ。あろうことか3パットでマイナス3点を献上。グリーン上でみんな腰砕け、笑いを堪えるので必死。打った本人放心状態。この日バーディも取れて良いペースで来ていたのだが、このホールがパーだと、残り3ホール全部ボギーでも生涯ベストだ、と本人が言った途端の出来事。パーどころかダブルパー、オリンピックもマイナス献上し、この1ホールで全て使い切り、運にも見放されたと嘆く。

ゴルフに限らず仕事、人生に於いても、目の前の事に集中せず、先の結果ばかり考えていると、思いもよらぬ結果が待ち構えている。よく言われるのが「捕らぬ狸の皮算用」で、「好事魔多し」とも言えます。調子が良い時ほど落とし穴に気付き難いし、気が付いた時には既に遅い。しっかりしたプランを持って、如何なる事態も想定内と思い準備をし、30㎝のパットも2mのパットを打つつもりで丁寧にプレーをしていれば、ダブルパーに留まらず、3パットにもならずに済んだもの。30㎝の彼はその後、順調だった取引を台無しにするミスをし、帰国命令が出され、その後同業他社に転職したとの事。聞けば一つのミスが引き金になったようで、つくづく「ゴルフは人生の縮図」とは良く言ったものだなと、思わずにはいられなかった。

③一発逆転狙い

時として、オリンピックはルール次第で飛んでもない点数になる事も有る。良く言われるオリンピックのインフレルールってやつですね。一例として、その日一番点数の低いプレーヤーが、前半後半それぞれ残り3ホールなら3倍、残り2ホールなら4倍、最後のホールは5倍を宣言できる、なんてルールもあった。勿論全員対象であるし、マイナスも3倍4倍となる。例えば、グリーン外からのアプローチがカップインしてバーディだと、外から+7、バーディで倍なので14点獲得が通常ルール。それが7番ホールで、3倍ルール適用すると、一気に42点となる。普段あまり賭けに出るようなタイプではないと思っていた人が、後半中盤まで進んだところで、インフレルールを持ち出してきた。16番は3倍、17番は4倍、18番は5倍だと。当日は通常のルールでやっていて、一桁台の点数しか取っていない彼は、一人負けになることがほぼ確定していた。プライドが許さないのか、乗り気ではない我々3名だったが、半ば強引にルール変更となった。結果から言えば、その後彼は1点も取れず、トップに居た人が更に上乗せし、負けの上塗りというか、傷口を広げただけであった。グリーン上の彼はこの日、グリーンとの相性が悪いというか、カップまで届かない事が多く、また、狙ったポイントに打てていないようで、上がりの3ホールで合わせて来るとは思えなかった。自分の今日のコンディションが分かっていないのだから、無理しないで、静かにやり過ごすゴルフをすればいいのになぁと思っていた。

彼に限らず、後半プッシュしてくるゴルファーを数多く見てきた。プッシュした時点で無理しているなぁと思えるのが99%、そうではない1%は、どちらかというとヤバい部類の方々。ヤバい部類は別として、99%プッシュ乃至インフレルールを言ってくるゴルファーは、根っからのギャンブル好きも少数いるが、大概自分を過大評価していて、自身のコンディションを自覚出来ず、本来の自分はもっと出来る、いつも出来ると勘違いしているようである。川の流れは同じに見えても同じではない。見えない所で色々な変化が起きている。それは人も同じ。違う違うと否定しても、今の流れ、状況を作ったのは自分であり、その処方箋を持っていない限り変わる事は無い。経験上、営業マンにこの手が多かった。業界の有益な情報も無く、プレゼン資料にもアピールポイントが見えない、受注したい気持ちだけが前面に出ていて、まるで響いてこない。宴席とゴルフで相手に気に入ってもらえれば、仕事を取れると教えられているのか、上司を見習って覚えたのか、目指すところが違うと言えばそれまでだが。

さて、次回はどんなゴルファーが出て来るのか。

 

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