自分を育てるもの 1-2

「生きる」を楽しむ

ゴルフと出会い、ゴルフが自分の人生にどのような影響を与えたかを今回のテーマにしていますが、前回の続きを始める前に書き留めておきたい事がありますので、ちょっと寄り道させて頂きます。ゴルフの取り組み方、日本との違いなんかを個人的な視点でまとめてみましたので参考になれば幸いです。

ゴルフで一番大きな問題「スロープレー」

先ずは「スロープレー」の定義から。

1. R&A、USGAの規則

ゴルフ規則2019年改訂版で「5.6不当の遅延;速やかなプレーのペース」5.6aプレーの不当の遅延には罰則が制定され2023年度版も継続。5.6b速やかなプレーのペースでは1打40秒以内にストロークすることを推奨。と、時間設定し客観的な判定をし易くしている。5.6bに具体的な罰則はないが、委員会が罰則を制定すべきと謳っているため、無罰で済む話ではない。ローカルルール、競技要綱・規則で制定すべきであろうことは容易に理解できる。米野球のMLBではピッチクロックという打者に対する投球時間を制限したルールを導入しているので、ゴルフに限らず時短が課題なのは共通しているのであろう。

2. 個人的な見解

コースデビュー時、まだ規則を知らない私が教えられたのは、1)同伴者を待たせるな 2)前の組に離されるな 3)藪に打ったボールは探すな の3つだった。理由はとにかくスロープレーにならぬよう同伴者だけではなく後続プレーヤーにも待たせて不快な思いをさせない事。ゴルフ場は自分一人がお客ではない。いろんな人間が多数訪れているから周りに気配りするようにと、1年近く言われ続けた記憶がある。一人前のプレーヤーは一人前の社会人でなければならないというのが諸先輩方の教えであった。また、月例会等の競技会に於いてもマーシャルの目が厳しく、表彰式の際にエチケット委員会からスロープレー改善の指導が入ったりしたため、普段のプライベートゴルフでも前の組に離されないよう気を使いラウンドしていたものである。1992年に日本を離れるまでの日本国内ではスロープレーに厳しかったし、年配の方が見知らぬプレーヤーでもスロープレーであれば注意することも珍しくなく、指摘を受けた方も当然のように前の組に追いつくよう急ぐ姿がよく見られたものである。ゴルフ規則の最初に書かれている「規則1」に罰則ではなく、プレーヤーの行動基準、すべてのプレーヤーに期待される行動であり、このゲームの審判員はプレーヤー自身という特殊性を持っており、他人に迷惑を掛けない、他人に不快な思いをさせない、コースに集まりプレーを楽しみ時間共有する全ての人が有意義に過ごすために制定されているのだと思う。スロープレーに限らず同伴者、後続プレーヤーに迷惑を掛けるのは、楽しさ半減、規則以前の問題であろう。

スロープレーの背景と考察、そして事例

お里が知れる、と言えば言い過ぎか? 1744年に「13か条のルール」という最初のゴルフ規則が制定され発展の基盤を築いたと言われている。これを世界基準に普及して来た訳だが、ルールに於いてお国柄、文化の違いでは済まされないはずである。が、他の競技同様に普及方法、プロセス次第で紳士的なプレーヤー(チーム)、粗雑なプレーヤー(チーム)が育ち、同じ土俵でプレーしているとは思えない進行結果になる。そんなことを思わせる事例が長年暮らした東南アジアで人種に関係なく多々遭遇する事があったので一部を。

インドネシア編

バタム島、ジャカルタ(ジャワ島)でのゴルフは2004年にシンガポールへ異動するまでの12年間。当時インドネシア人でゴルフをやるのは一部の富裕層(中華系が圧倒的に多い)達で、偶に5人打ちのグループが居たが、追い付いて2ホールくらいで先に行かせてくれストレスを感じることは少なかった。現地駐在の日本人グループはというと、年配の方、先輩駐在員の指導がそこそこ行き渡っていたのか、打っては走り先を急ぐビギナーと思しきプレーヤーの姿がよく見掛けられた。当時の雰囲気として(一部かもしれないが)海外駐在特にアジア地区への赴任が決まったら現地でゴルフ必須の空気があり、赴任時にゴルフバッグを担いで離日する人が多かった。現地でデビューするにしても、2名か多くて3名のグループで早朝か午後遅い時間にラウンドし、同伴者に迷惑が掛からないペースで回れるまで面倒を見る、少なくとも私含め私の周辺ではそうしたことが普通に行われていた。2005年以降どうなのかは知りません。また、進出してきているのは日本だけでは無いので、好むと好まざるに拘わらず色んな国の方々と絡むことが多く、中でも悩ましい存在が韓国人グループ。スロープレーに加え、茶店で休んでいるところに追いついてもパスさせることもなく、行く手を遮るかのように出る準備を始め次のホールへ。追い付いたこちらは嫌でも休憩を余儀なくされる。マーシャルが言っても急ぐことは無い、逆切れしてマーシャルに文句を言う者まで。朝コースに付いたらスターターに韓国人グループが居るか確認して、被害が最小限に留められるようスタートホールを1番か10番か決めてからラウンドするようにしていた。スロープレーに加え、もっと迷惑をだったのは所構わず大声で話をするので、後ろに付かれても嫌な思いをすることが多かった。他の国の方も居るには居たが、問題行動を見た記憶が無いので概ね行儀が良かったのではないか。それとも韓国人プレーヤーの酷さに他が打ち消されたのか、とはいえ気持ちよくプレーした事の方が圧倒的に多かったので悪い印象は残っていない。

シンガポール編

暮らしたのは2年程なので多くの事例に触れていないが、記憶の限りで言えばスロープレーだけでなく迷惑と思う行為に遭遇することは本当に少なかったと言える。思えばこの地で韓国人グループに遭遇していなかったと思う。プレーヤー自体は居たはずだが、グループに遭遇した記憶が無い。それはどうでもいいとして、当地は会員権だけではなくプレーフィーも高く、駐在員でも島内で頻繁にプレー出来る人は限られていた。シンガポール人も同様でゴルフ人口もそれほど多くなかったのだろうと思う。それ以上に、周辺の国に比べプレー条件が厳しいというのもあった(今どうか知らないが)。メンバーは別として、ビジターかゲストはUSGA査定でH.C24以下でなければ基本コースに出してもらえなかった(H.Cカード必携)。カードを持っていない、H.C自体持っていないプレーヤーはコース所属プロがレンジに連れて行き、何球か打たせH.C24以下相当か判定する。仮にダメとなればその日はプレー不可、残念であるが帰るかクラブハウスで過ごすしかなかった。隣国マレーシアのシンガポールと接しているジョホール州でもそのルールを適用しているコースがいくつかあった。その手のコースはいつ行ってもストレスを感じること無くプレー出来たし、前のグループに追い付くことも、後ろのグループに追い付かれることも無かった。H.Cの制約のお陰か遅いグループが居なかったのと、15分間隔(と記憶)スタートもゆとりあるラウンドが出来る所以だったのではと思う。お金が有って任期が長ければ、安くは無かったが会員権購入していただろう。

タイ編

スロープレーに限らず、17年間暮らすことになった当地が、個人的には最悪のゴルフ環境であった。ゴルフ天国などと言われているが、とにかく酷いプレーヤーの数は断トツで、アジアNo.1(ワースト)である。スロープレーに限っていえば、週末の午前11時以降スタートしようものなら日没まで終われるか保証はない。理由はその時間帯よりグリーン費が安くなり客数が上がるのと5人打ちが許されるコースが多く、その大部分がタイ人グループ。時にはプレーヤー5人の他、キャディバッグ、傘、椅子それぞれを持つキャディが付き、一組15人以上がグリーンに向かって歩いている事も珍しくなかった。グリーンに上がると高額レートで握っているため1打1打に非常に長い時間を掛ける。ハーフ3時間半から4時間掛る事も。追い付いて待たされても譲られたことは無いし、マーシャルが注意しても効果無し。得てしてこのようなグループには軍人、役人(警察が多かった)、地元の有力者なんかが混じっていることが多く、マーシャルは何も言えずただ見ているだけで、その後どこかへ行ってしまう。追い付きそうな時は2~3ホールスキップして最後にスキップしたホールに戻りプレーすることが日常的だった。ゴルフ場側にも問題はある。他のお客が気持ちよくプレー出来るよう運営してくれればいいのだが、階層社会+利己主義のタイでは出来る訳が無い。5人打ちではなく4人なら早いのかと言えばそうでもなく、やはり高額レートでの握りが影響していると思えるスロープレーには何度も嫌な思いをした。後ろから見ていて、明らかに負けが決まったと思われるケースではコンシードしてグリーンから降りていたので、プレーよりも賭けをするためにゴルフをしていたはずである。加えて彼等が去ったグリーン上はスパイク跡が酷く、民度の低さが窺えた。タイ人プレーヤーに腹を立てないよう自制するか、諦めるかの何れかであるし、早朝タイ人がコースに来ない時間帯6時から7時スタートでプレーするのが賢明だった。ちょっとした遠方へは夜明け前4時自宅出発という日も。

一方日本人はというと、残念ではあるが現地駐在員にも質の悪いのが居たのも事実。タイに赴任してからゴルフを始める者の多くが、練習をろくにせずコースデビューするパターンが年々増えていて、スロープレーにも我関せず、上司と思しき同伴者は全く急かすこともない、教えている様子もない。マーシャルが注意し、しばらくマーシャルが同行した時は急ぎ、居なくなるとまたスロープレー。10年ほど前だとプロのトーナメントが開催されるプレーフィーの高いコースで見掛けることは無かったが、近年頻繁に見かけるようになり残念としか言いようがない。むしろこの手のコースがゆとりあるスタート間隔なので彼等にしてみれば高くてもやり易い方を選ぶのだろう。後続にしてみれば迷惑千万なのだが。では新人ゴルファー以外はどうかというと、そこそこやれている御仁方も例に漏れず酷いのが結構居て、同伴したくない類のゴルファーではあるが、取引上避けて通れぬ相手、サラリーマンの宿命というか好き嫌い別として諦めてお付き合いしたものである。この手の御仁方に共通しているのは、自分の打順になってからクラブを選ぶ、ティペグを探す、時にはバッグから出し忘れていたり、手順が定まっていないというか要領が悪く、スロープレーになって当たり前の行動パターンである。加えて時間にルーズで集合時間、スタート時間を守らない、グリーン上同伴者のラインを踏んでも気にしない、かといって踏まれると怒る、過少申告が多い、握りのルールを途中で勝手に変える、ゴルファーとしてというより人としてどうかというレベル。インドネシア、シンガポール、マレーシアの日本人駐在員の方々とは比較にならないレベルの低さ。時代が、とか言いたくないが、1990年代と2000年代の駐在員ゴルファーの違いといえば違いなのだろう。ついでにインドネシアで嫌な思いをした韓国人ゴルファーはタイでも同じで、むしろ過激化していた。グリーン上でプレーしていて後方から打ち込まれた事一度や二度ではない。おまけに謝りもしない。よく通っていたゴルフ場で、キャディに暴力を振るい怪我をさせたことで韓国人客を数年断っていたところもあった。タイのベストシーズンと言われる乾季(11月~2月、3月も含むという方も)、韓国から100人単位でツアー組んで来泰しゴルフ場に溢れ迷惑行為を巻き散らかすので、この季節は好きなのだが、ゴルフは楽しめたものではなかった。タイと言えば西洋人が好む国の一つで、避暑地、観光地のゴルフコースでは季節問わず大勢の方々が楽しんでいた。英国人の方と何度かラウンドすることも有ったが、インドネシア駐在時に一緒にプレーした豪州人同様、スコアに拘らず18ホール回らなくても良い気ままにその日の気分で楽しむスタイル。前が詰まっていても紳士的な態度。流石ゴルフ発祥の地(諸説あるとしても)の方だなぁと、こちらまで背筋が伸びる思いであった。

守るべきものを守るのは当たり前

歌は世につれ世は歌につれ、というようにゴルフも似たようなものか。同時に3地域で暮らし比較したわけではないが、ゴルフがその地でどのように普及したか、どのような人が増えてどのように関わったか、背景次第でゴルフ環境は全く異なるものになる。最後の任地、タイの経験からそう言えると感じた。ゴルフ天国などと言っても中身が伴わず、観光同様に金さえ入れば他はどうでもいい、結局ゴルフは金儲けの道具ということだろう。他国はどうあれ、個人的な思いとして日本はルール、マナー、エチケットを重んじ先人達がゴルフ普及に努めてきて今があると考えている。ただ、最近のゴルファーを見るにつけこれらが軽んじられているようにしか感じない。ただのボール転がしに貶めたように思えて何ともやるせない。若者に限らず国内ゴルフ人口を増やそう、もっと普及させよう、悪いことではないがその方法というかプロセス、アプローチに問題がある。今の時代に合わないとか言っても、日本人は礼節を重んじ、他人を気遣い、労わる民族ではなかったのか。どこかに置き忘れたまま普及を図っても薄っぺらなものにしかならない。それのどこに魅力があるのだろうか。

次回はゴルフが生活の一部になり、如何にして自分を成長させてくれたかをまとめてみます。

 

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